事業の成長に合わせて端末を買い足し、必要に応じてクラウドサービスを契約するうちに、構成や管理担当が分かりにくくなることがあります。保守契約があっても、障害時にどこまで対応してもらえるかが曖昧なら、依頼先を探すところで時間がかかります。
現状を把握する際は、機器やサービスの一覧に管理担当と障害時の連絡先を添えます。本記事では、端末、ネットワーク、サーバーとデータ、アカウントの四つに分けて、点検項目と社内外の責任分担を解説します。
IT基盤を構成する主な要素
自社の環境を整理する際は、端末、ネットワーク、サーバー・データの保存先、アカウントの四つに分けると、管理対象と担当者を確認しやすくなります。| 整理する範囲 | 主な構成要素 | 運用で確認すること |
| 端末 | パソコン、業務用スマートフォン、タブレットなど | 利用者、更新状況、保守期限、故障時の代替手段 |
| ネットワーク | インターネット回線、ルーター、スイッチ、Wi-Fiなど | 接続構成、管理担当、契約先、障害時の連絡先 |
| サーバー・データの保存先 | 社内サーバー、クラウド上のサーバー、ファイル共有サービスなど | 用途、保存場所、バックアップ、復旧方法 |
| アカウント | Microsoft 365などの利用者アカウント、管理者権限 | 発行・変更・停止の手順、承認者、管理担当 |
これは、自社の管理状況を確認するための整理方法です。例えば、クラウド上のファイルを使うにも、端末、ネットワーク、アカウントが関わります。一つの不具合でも原因は複数の範囲にまたがるため、それぞれの担当と依頼先を把握しておく必要があります。
端末は更新状況と故障後の業務まで確認する
パソコンの買い替えは、購入年だけでは判断できません。OSやソフトウェアのサポート状況、故障の頻度に加え、止まったときの業務への影響も確認します。毎日の受注に使う一台と、月に数回しか使わない一台では、故障した場合の優先度が違います。サポートが終了し、安全な利用を継続しにくい端末については、使用頻度が低くても更新や利用停止を検討する必要があります。
台帳には、次の情報を残しておくと判断に役立ちます。
- 利用者と用途
- OS・主要ソフトウェアのサポート状況
- 保守期限と修理の依頼先
- 故障時の代替機や代替手段
クラウド利用を支える通信環境
クラウドサービスを増やしたのに、回線やWi-Fiは以前のまま、ということはないでしょうか。Web会議とファイルの送受信が重なる時間帯に遅くなるなら、現在の利用状況に通信環境が追いついていない可能性があります。ただし、回線を高速なものに変更すれば解決するとは限りません。ルーターの処理能力、Wi-Fiの電波状況、端末側の問題なども考えられます。
調査を依頼する前に、社内で次の情報を整理すると、原因を絞り込みやすくなります。
- いつ、どの場所で遅くなるか
- 特定の端末だけか、複数の端末で起きるか
- 特定のサービスだけか、インターネット全体が遅いか
- 利用人数やサービスに変化があったか

サーバーとデータは業務を再開する条件から整理する
ITインフラの運用では、社内サーバーがある場合は、用途、管理担当、保守契約、更新状況を確認します。クラウド上のサーバーやファイル共有サービスを利用している場合も、契約者、管理者、データの保存場所を把握しておきます。クラウドでは、サービス提供元と利用企業が担う管理範囲が異なります。アカウント、共有権限、データ保護について誰が責任を持つかは、契約とサービスの構成で確認します。同期や標準の復元機能だけで、自社が必要とする復旧条件を満たすかも検証が必要です。
バックアップを検討する際は、まず失うと業務に支障が出るデータを整理します。受注情報、契約書、設計資料では、失った場合の影響や再作成の可否が異なります。
各部署で確認したいのは、次の点です。
- ほかに原本や控えがあるか
- どの時点のデータまで戻れば、業務を続けられるか
- いつまでに復旧する必要があるか
- 復旧を待つ間、別の方法で対応できるか
設定後は、実際に必要なデータを戻せるか、復旧にどの程度の時間がかかるかも確認します。
アカウント管理には人事や所属部署も関わる
入社時は、サービスを使えなければ本人から連絡が来ます。一方、退職後のアクセス権限は、残っていても気づきにくいものです。アカウントの発行や停止を担当者の記憶に頼らず、人事上の手続きと結び付けておく必要があります。
例えば、人事や総務が入退社・異動の情報を管理担当へ連絡し、所属部署が必要な権限やデータの引き継ぎ先を判断します。その内容に基づいて、管理担当者が設定を変更し、完了を報告する流れです。
異動時には、新しい権限を追加するだけでなく、以前の部署で使っていた権限を引き続き必要とするかも確認します。退職時は、アクセスの遮断と、メールやファイルの保存・引き継ぎを分けて管理します。
外部に操作を任せる場合も、誰が依頼し、誰の承認を受けて変更するのかを明確にしておきます。
IT基盤の運用はどこまで外部に任せられるか
IT基盤の構成を整理したら、端末の更新、アカウントの変更、障害対応などについて、社内で判断する事項と、実作業を担う担当を確認します。保守契約があっても、故障品の交換だけなのか、原因調査や設定変更、復旧まで含むのかで、社内に残る仕事は変わります。複数の事業者が関わる場合は、調査結果を取りまとめる担当も必要です。
| 業務 | 社内で判断・確認すること | 外部委託の対象となる作業例 |
| 端末の更新 | 用途、予算、更新時期、業務への影響 | 機種選定の支援、初期設定、データ移行 |
| アカウントの変更 | 必要な権限、承認者、停止日、引き継ぎ先 | アカウント発行、権限設定、停止処理 |
| ネットワークの見直し | 利用状況、停止可能な時間、費用 | 構成調査、原因の切り分け、設定変更 |
| バックアップ・復旧 | 対象業務、必要なデータ、復旧の期限 | 方式の提案、設定、監視、復元テスト |
| 障害対応 | 業務への影響、復旧の優先順位、業務再開の判断 | 原因調査、復旧作業、関係事業者との技術的な調整 |
実際の分担は、対象システム、社内体制、契約範囲に応じて決めます。作業後は、技術担当者が動作を確認したうえで、業務担当者が普段の作業を行えるかを確認します。
構成の一覧に担当者と依頼先を書き添える
自社のIT基盤を見直す際は、機器やサービスの名前を並べるだけでなく、管理担当、契約先、障害時の連絡先も書き添えてください。設定変更の承認者や、保守契約で対応してもらえる範囲も分かると、対応が必要になったときに動きやすくなります。Advangeは、端末管理、ネットワーク、Microsoft 365・ID管理、クラウド運用を支援しています。構成図や資産台帳、保守契約の資料があれば、対応範囲を検討する材料になります。
最初から完全な台帳を作る必要はありません。まず重要な業務に使う機器やサービスについて、管理担当と連絡先が分かる状態を目指してください。担当と連絡先を確認し、ITインフラの管理を日常業務に組み込んでください。
参考資料
IPA 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン
Microsoft クラウドにおける共同責任
参照日 2026年10月26日



